最近、連日のように新型インフルエンザ(豚インフルエンザ)についての報道がなされています。
情報が多すぎて、混乱している方も多いと思い、一小児科医の立場で、一言申し上げたいと思います。
結論から申しますと、「現時点では、新型インフルエンザとはいえ、普通のA型インフルエンザが時期はずれに流行している!!」というだけのことです。
そもそも、インフルエンザというウイルスは非常に変異しやすいウイルスなので、豚インフルエンザに限らず、いつ変異した新型インフルエンザが流行してもおかしくないのです。
今回のインフルエンザは、
1)メキシコから流行が始まった。
2)豚から人への感染が確認された。
3)豚、鳥、人、3種類のウイルス遺伝子が混合したものである。
など、医学的に興味深い点もあります。
しかし、全世界での重症者の数や、日本での感染者の経過をみると、通常のA型インフルエンザと変わりがなく、また、タミフルやリレンザが効くということもわかっていますので、一般の人の対応としては、毎年流行する、A型インフルエンザの対応で十分だと思います。
要は、流行したインフルエンザが人に対してどのくらいの毒性を持つかが重要であって、変異した経緯がいままでのインフルエンザと違っていても、大きな問題ではないのです。
ただ、ここで、新型インフルエンザならではの問題もあります。それは新型インフルエンザにかかった際の社会の対応が、現時点では、あまりにも過敏すぎることです。
例えば、誰も生徒に発症者がいない学校の休校や、患者家族の自宅待機、軽症の人への入院治療など、患者さんや周囲の人への病気以外の精神的ストレスが強すぎます。
したがって、新型インフルエンザがそれほど怖くなくても、それにかかった際の社会から受ける不利益があまりにも大きいため、できるだけかからないようにしたほうがよいと思います。
ではどのように予防したらいいかといえば、前に書いたように、普通のA型インフルエンザと同じ位の伝染力、毒性なのですから、普通のインフルエンザの予防法の様にやればいいのです。
手洗い、うがい、マスクをつける、はもちろんですが、できるだけ人ごみ、特に小さな部屋に不特定多数の人が集まるような場所を避けることお勧めします。
万が一、新型インフルエンザに罹ってしまった場合でも、一般的なインフルエンザの治療で、ほとんどの方が治っていますので、多少の不自由はあるでしょうが、過度に心配する必要はありません。
冷静に普通のインフルエンザと同様の対応をしていけばよいと思います。
私の予想では、まもなくこの新型インフルエンザの対応は普通のインフルエンザの対応に変わると思います。
ただ、現時点では、感染の拡大を抑える意味で、一般のクリニックでは新型インフルエンザが疑わしい方を診ることができません。
疑わしい場合は最寄りの保健センターに電話をして、対応を相談してください。