咳は外来診察で最も訴えのある症状の一つです。
「一ヶ月もずっと咳が続いています」 「薬を飲んでいるのですが咳が治りません」など、まだ言葉がうまく通じないお子様が苦しそうに咳をしているのをみていると親は早く咳を止めてあげたいと懸命です。
咳というのは気道の異物を排除するための防衛反応で、また痰を出すために有用な生理反応でもあります。もし咳をすることが出来なければ、気管の中の異物や痰が気管に詰まり窒息してしまいます。
そもそも咳って何で出るの?
そもそも咳とは何故出るのでしょうか?
気道には咳をおこさせるスイッチのようなもの(咳受容体)があり、これに何らかの刺激が加わった時に反応する形で咳がでます。
これらの刺激としては異物(ほこり、ピーナッツなど)や気道分泌物(鼻汁、喀痰)などの物理的刺激と、病原菌の有する毒素、ガス、タバコの煙、アレルギー反応などの化学的刺激があります。
いずれの原因も、周りからみれば咳をしていることにかわりはないので咳の性質、持続時間、咳の多く出る時間帯などの情報をよく聞き、聴診等の診察をして原因を追究します。
喉の炎症による咳と、人の防衛反応の結果起きる咳の2種類に注意
小児に最も多い感染による咳のほとんどが風邪などの細菌やウイルスによる口をあけて見える喉の周り(咽頭部)の炎症によるものです。
原因が感染である場合に注意しなければならないのは、感染そのものが起こす直接炎症による化学的刺激と、それに伴う分泌物の増加による物理的刺激の2種類が混ざっていることです。
直接炎症であれば抗生物質の投与などで良くなりますが、分泌物による咳はある程度時間が経ち喀痰が減るまでは治す方法はありません。
安易な咳止めの使用や不必要な外出は、咳が長引いてしまう原因に
特にスーパーなどへの買い物は良くありません
お子様が咳で夜眠れない・吐きそうなくらいの咳をするなど、咳が本人に対して苦痛を与えていれば何らかの薬で止めてあげる必要があると思います。
ですが、先ほど述べたように、咳というのは痰を出すための生理反応の一つですから、安易な咳止めの投薬は出ようとしている痰を引き留めてしまうことになり、長い眼で見ると逆に咳を長引かせてしまいます。
また咳がでているのに人込みなどに出かけると、ほこりを吸い込んだり冷たい外気に当たったりと、喉に様々な物理的刺激を与えることになります。
どんなに良い薬を飲んでいても外からの刺激が多ければそれに反応する形で咳がでてしまいます。
お子様の咳を早く治したいのであれば、不必要な外出をできるだけ控えることをお勧めします。(特にスーパーなどの買い物は咳に最もよくありません。)
ちなみに咳、鼻汁のみで機嫌がよければ入浴を避ける必要はありません。
気道に適度な湿度を与えたほうが咳の良くなることもありますので普通にお風呂に入れてあげてください。